
【司法書士向け】2027年法改正で変わる「本人確認」の最前線|ICチップ確認の義務化と本人確認アプリ活用術
はじめに:なぜ今、本人確認フローの見直しが必要なのか(専門家向け)
司法書士業務において最も重要なプロセスの一つである「本人確認」。
2027年(令和9年)4月に予定されている犯罪収益移転防止法(犯収法)の改正により、対面取引における「ICチップ読み取りの義務化」が導入される見込みです。

従来のような「原本の目視確認」や「コピーの取得」だけでは、法的に不十分となる時代が目前に迫っています。また、精巧な偽造免許証による地面師事件やなりすまし詐欺も後を絶たず、万が一本人確認に不備があれば、損害賠償額が1億円を超えるリスクも実際に発生しています。
本記事では、最新の運用基準と、今すぐ導入すべき「本人確認アプリ」の活用法について解説します。
2027年法改正と全体方針の変更点
今後の本人確認業務における最大のトピックは以下の2点です。
① ICチップ読み取りの義務化(2027年4月予定)
犯収法改正により、対面取引においてもICチップの読み取りが必須となる見通しです。これに伴い、運転経歴証明書など「ICチップ非搭載」の証明書は、単体での本人確認書類として利用できなくなる可能性があります。
② 「マイナンバーカード」の最優先化
セキュリティの強固さと普及率を鑑み、顧客に対してはマイナンバーカードの提示を最優先で求める運用へシフトする必要があります。
一方で、以下の書類は取り扱いが終了または制限されます。
- 健康保険証: 廃止に伴い利用終了
- 住基カード: 有効期限切れ・移行に伴い利用終了
- 2020年2月以降発行のパスポート: 所持人記入欄(住所)がないため原則取扱い不可
必須となる「確認用アプリ」の導入
肉眼やライトによる目視確認には限界があります。例えば運転免許証の場合、ライトを当てて「透かし」や「金属片」を確認しても、ICチップ自体がすり替えられていれば偽造を見抜くことはできません。
お客様のため、業務・取引の安全性を担保するため、以下のアプリ導入が必須となります。
- マイナンバーカード用: マイナンバーカード対面確認アプリ
- 運転免許証用: IDカードリーダーアプリ
- 在留カード用: 在留カード等読取アプリ
書類別:実務上の確認ポイントと注意点
【マイナンバーカード】(最優先書類)
もっとも信頼性の高い書類ですが、以下の点に注意が必要です。
- 有効期限のダブルチェック:
- カード本体:発行から10回目の誕生日まで
- ICチップ(電子証明書):発行から5回目の誕生日まで
- ※更新未済の場合、IC読み取りがエラーとなるため注意が必要です。
- コピー取得時の厳守事項:
- 原則、表面のみコピー。
- 裏面が必要な場合は、「個人番号」および「QRコード」のマスキング(墨消し)が必須です。流出時の法定刑が重いため、取り扱いには細心の注意を払ってください。
- スマホ搭載のデジタルマイナンバー:
- 現時点では本人確認書類として利用不可です。必ず「カード原本」の提示を求めてください。
【運転免許証】
今後は「ICチップ確認」を行わないと、偽造リスクを排除できません。ライトでの確認では不十分です。ICチップと思ったらただの金属片だった、ということもあり得ます。
- アプリ確認の推奨手順:
- IDリーダーアプリを使用し、「暗証番号ステータス」を選択して読み取ってください。
- ※「運転免許証」メニューを選択すると暗証番号2組を求められますが、セキュリティとしてはより望ましいです。
- 番号規則性の確認:
- 上2桁(都道府県コード)や、3-4桁(取得西暦)と本人の経歴に矛盾がないか確認します。
- 「マイナ免許証」への対応:
- 今後、「免許証を持たず、マイナンバーカードに情報を一本化(マイナ免許証)」する方が増加します。物理的な免許証がない場合は、必ずマイナンバーカードでの本人確認へ誘導してください。

【在留カード】
偽造・変造が多発しているため、目視確認は危険です。
- 原則: 専用アプリによるICチップ読み取りを必須とします。
- 推奨フロー: 可能な限り「在留カード(アプリ確認)+マイナンバーカード(アプリ確認)」の二重確認を行うことが望ましいです。
コンビニ交付証明書(印鑑証明書等)のリスク管理
役所に行かずコンビニで取得できる印鑑証明書は便利ですが、原本性の確認には注意が必要です。
- 原本確認の難易度:
- コピー用紙に印刷されるため、手触りでの判断はできません。
- 裏面のスキャン画像を検証サイトにアップロードすることで改ざん検知が可能ですが、持ち込まれた証明書が「コピー」だった場合、それを検証しても(画像データ自体は正しいため)偽造を見抜けない可能性があります。
- 原本性については、赤外線カメラでの確認が必要です。
- 本人確認の強化:
- コンビニ交付を利用できるのは「マイナンバーカード所持者」に限られます。
- そのため、コンビニ交付の印鑑証明書を受領する場合は、必ずマイナンバーカード本体の提示を受け、IC確認を併せて行うことで本人確認の精度を担保してください。
まとめ:本人確認のためのツールを活用し、事務所と依頼者を守る
司法書士業務における本人確認の不備は、事務所の存続に関わる重大なリスクです。
2027年の義務化を待たず、今のうちから「アプリによるICチップ確認」を標準フローとして定着させることが、プロフェッショナルとしての責務と言えるでしょう。

当事務所では、最新の法改正に対応した厳格な本人確認体制のもと、お客様や取引関係者様のため、安全確実な取引のサポート及び登記手続きを提供しております。
また、本人確認アプリやマイナンバーカードについて、協力先業者様との研修・勉強会も行っておりますので、関心がある方はお気軽にご相談ください。
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